コラム
12.252025
親が施設に入るときの実家の片付け|プロが教える手順と費用・注意点

親が介護施設に入ることになり、実家の片付けをどう進めればよいかお悩みではありませんか。長年暮らした家には荷物が溢れ、親との意見の食い違いや兄弟間の調整など、片付け以外の問題も山積みです。本記事では、遺品整理のプロが実家の片付けをスムーズに進める手順から、親子関係を壊さないコツ、費用相場、業者選びのポイントまで徹底解説します。
この記事でわかること
- 親が施設に入る際の実家の片付けを進める具体的な手順
- 親が片付けを嫌がるときの説得方法とトラブルを防ぐ記録の取り方
- 一人っ子・遠方在住・認知症など状況別の対処法
- 施設入居後の実家の活用方法(売却・賃貸・維持・解体)と放置リスク
- 片付け費用の相場と信頼できる業者を見極めるチェックポイント
親が施設に入る際の実家の片付けを進める手順

親御さんが介護施設に入ることになった場合、実家の片付けは避けて通れない課題です。しかし、何から手をつければよいか分からず、途方に暮れてしまう方も少なくありません。実家の片付けを効率的に進めるためには、まず全体の流れを把握し、計画的に取り組むことが大切です。ここでは、スムーズに片付けを進めるための3つのステップをご紹介します。
実家を今後どうするか家族で方針を決める
実家の片付けを始める前に、まず家族で話し合っておきたいのが「実家を今後どうするか」という方針です。この方針によって、片付けの範囲や進め方が大きく変わってきます。
たとえば、親御さんが施設に入った後も配偶者がそのまま住み続けるのであれば、大規模な片付けは必要ありません。一方、売却や賃貸を検討している場合は、家財道具をほぼすべて処分する必要があります。また、しばらく空き家として維持管理する場合は、定期的な換気や清掃ができる状態に整えておく必要があるでしょう。
家族会議では、親御さん本人の意向を最優先にしながら、兄弟姉妹間で役割分担や費用負担についても話し合っておくことをおすすめします。この段階できちんと合意を形成しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。特に相続に関わる問題は、早めに専門家に相談しておくと安心です。
施設に持ち込むものと残すものを仕分けする
方針が決まったら、次は実家にある物の仕分けに取りかかります。仕分けの基本は、以下の4つに分類することです。
- 施設に持ち込むもの
- 実家に残すもの
- 処分するもの
- 保留するもの
介護施設には持ち込める物に制限があることが多く、一般的には衣類、洗面用具、少量の思い出の品程度しか持ち込めません。施設の規定を事前に確認し、必要最低限の持ち物リストを作成しておくとスムーズです。
実家に残すものとしては、権利書や保険証券などの重要書類、通帳や印鑑、写真アルバムなどの思い出の品が挙げられます。これらは紛失を防ぐため、保管場所を決めて家族間で共有しておきましょう。判断に迷うものは無理に処分せず、いったん「保留」として時間を置いてから再検討するのも一つの方法です。
仕分け作業は可能であれば親御さんと一緒に行うことで、大切な物を誤って処分するリスクを減らせます。親御さんが参加できない場合は、写真を撮って確認してもらうなどの工夫をすると良いでしょう。
不用品の処分と清掃・貴重品の整理を行う
仕分けが終わったら、不用品の処分と清掃に移ります。不用品の処分方法は、自治体のゴミ回収を利用する方法と、専門業者に依頼する方法があります。
自治体のゴミ回収を利用する場合は、分別ルールに従って処分を進めます。粗大ゴミは事前予約が必要なことが多く、回収まで時間がかかることもあるため、スケジュールに余裕を持って計画しましょう。冷蔵庫やエアコンなどの家電リサイクル法対象品は、リサイクル料金を支払って適切に処分する必要があります。
物量が多い場合や、遠方で頻繁に通えない場合は、遺品整理業者や生前整理業者への依頼を検討するのも一つの選択肢です。業者であれば、仕分けから処分、清掃までを一括でお任せできるため、時間と労力を大幅に削減できます。
清掃が完了したら、最後に貴重品の整理を行います。通帳や印鑑、不動産の権利書、保険証券などは安全な場所に保管し、その場所を家族で共有しておきましょう。また、親御さんが契約しているサブスクリプションサービスや定期購入品がないかも確認し、不要なものは解約手続きを進めておくと、後々の手間が省けます。
親が施設に入る際の実家の片付けで親子関係を壊さないコツ

実家の片付けは、単なる作業ではなく、親御さんの長年の思い出や人生そのものに触れる繊細な作業です。進め方を誤ると、親子関係にひびが入ってしまうこともあります。ここでは、親御さんの気持ちに寄り添いながら、円滑に片付けを進めるためのコツをご紹介します。
親が片付けを嫌がるときの説得の仕方
親御さんが片付けを嫌がるのには、さまざまな理由があります。長年住み慣れた家を離れることへの寂しさ、自分の持ち物を処分されることへの不安、子どもに迷惑をかけたくないという遠慮など、複雑な感情が絡み合っています。まずはその気持ちを理解し、受け止めることが大切です。
説得する際は、「片付けなければならない」という義務感で押し付けるのではなく、親御さんにとってのメリットを伝えるようにしましょう。たとえば、「施設での新生活を快適に始めるために、必要なものを一緒に選びたい」「大切なものをきちんと整理して、安心して預けられるようにしたい」など、前向きな言葉で伝えると受け入れてもらいやすくなります。
また、一度にすべてを片付けようとせず、「今日は衣類だけ」「この部屋だけ」と範囲を限定して少しずつ進めるのも効果的です。親御さんのペースに合わせて、無理のない範囲で進めることで、抵抗感を和らげることができます。どうしても進まない場合は、信頼できる第三者(ケアマネージャーや親戚など)に間に入ってもらうことで、冷静に話し合いができることもあります。
勝手に捨てたと言われないための声かけと記録方法
片付けが終わった後に「あれはどこにいった」「勝手に捨てたのではないか」と言われてトラブルになるケースは少なくありません。特に認知症の症状がある親御さんの場合、片付けに同意したこと自体を忘れてしまうこともあります。こうしたトラブルを防ぐためには、事前の声かけと記録が重要です。
物を処分する際は、必ず親御さんに確認を取り、その場で同意を得るようにしましょう。「これは施設に持っていきますか?」「これは処分してもいいですか?」と一つひとつ丁寧に確認することで、後から「聞いていない」というトラブルを防げます。
また、片付けの様子を写真や動画で記録しておくことも有効です。処分する前の状態、親御さんが同意している様子、処分後の状態などを記録しておけば、万が一トラブルになった際の証拠になります。日付入りのメモや、親御さんに書面で確認のサインをもらっておくのも一つの方法です。
兄弟姉妹がいる場合は、片付けの進捗状況を定期的に共有し、全員が納得した形で進めることも大切です。LINEグループなどを活用して、写真付きで報告を行うと、離れて暮らす家族とも情報を共有しやすくなります。
親が施設に入るときの実家の片付け|状況別の進め方

実家の片付けの進め方は、ご家族の状況によって大きく異なります。兄弟姉妹で協力できる場合もあれば、一人っ子で頼れる人がいないケース、遠方に住んでいて頻繁に通えないケースなど、さまざまな事情があるでしょう。ここでは、よくある状況別に、実践的な対処法をご紹介します。
一人っ子や遠方在住で頻繁に通えない場合の対処法
一人っ子の場合、片付けの負担をすべて一人で背負わなければならず、精神的にも体力的にも大きな負担がかかります。また、仕事や育児との両立、遠方に住んでいて頻繁に帰省できないといった事情を抱えている方も多いでしょう。
このような状況では、無理に自分だけで片付けようとせず、専門業者の力を借りることを検討してください。遺品整理業者や生前整理業者は、仕分けから処分、清掃までを一括で対応してくれるため、限られた帰省の機会を最大限に活用できます。立ち会いなしで作業を進めてくれる業者もありますので、遠方にお住まいの方でも利用しやすいでしょう。
業者に依頼する際は、事前に実家の写真を撮影して送付し、見積もりを取っておくとスムーズです。帰省時に最終確認と貴重品の整理だけを行い、その他の作業は業者にお任せするという形であれば、1〜2日の滞在でも対応可能です。
また、親戚や近所の方に協力をお願いできる場合は、定期的な見守りや郵便物の転送などを頼んでおくと安心です。空き家管理サービスを利用するという選択肢もあります。
親が認知症で意思確認が難しい場合の対応
親御さんが認知症を患っている場合、片付けに対する意思確認が難しくなることがあります。その日の体調や症状によって、同意したことを忘れてしまったり、判断能力が低下していたりするケースも少なくありません。
認知症の親御さんの実家を片付ける際は、まず主治医やケアマネージャーに相談し、現在の判断能力について確認しておくことをおすすめします。判断能力が著しく低下している場合は、成年後見制度の利用を検討する必要があるかもしれません。成年後見人が選任されれば、法的に正当な手続きのもとで財産管理や不動産の処分を行うことができます。
日常的なレベルでの対応としては、片付けの際に本人の意向をできるだけ尊重しつつ、その都度丁寧に説明を繰り返すことが大切です。急かさず、本人のペースに合わせて進めましょう。また、前述のとおり、片付けの様子を写真や動画で記録しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
認知症の方は環境の変化に敏感で、混乱しやすい傾向があります。片付けを進める際も、一度に大きく変えるのではなく、少しずつ段階的に進めるよう心がけてください。本人にとって馴染みのある物や安心できる物は、できるだけ残すようにすると、精神的な安定につながります。
親が施設に入った後の実家をどうするか|活用方法と放置リスク

親御さんが施設に入った後、実家をどうするかは多くのご家族が悩む問題です。売却して現金化する、賃貸に出して収入を得る、そのまま維持管理する、解体するなど、さまざまな選択肢があります。一方で、判断を先延ばしにして放置してしまうと、思わぬリスクが発生することも。ここでは、実家の活用方法と放置リスクについて詳しく解説します。
売却・賃貸・維持・解体の選択肢と判断基準
実家の今後を決める際は、それぞれの選択肢のメリット・デメリットを理解した上で、ご家族の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
売却は、まとまった資金を得られることが最大のメリットです。施設の入居費用や今後の介護費用に充てることができます。住まなくなってから3年以内に売却すれば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を適用できる可能性があり、譲渡所得税を大幅に軽減できます。ただし、売却には時間がかかることもあり、不動産市況によっては希望価格で売れないこともあります。
賃貸に出す場合は、毎月の家賃収入を得られるため、親御さんの施設費用や生活費に充てることができます。ただし、借り手が見つかるまでに時間がかかることや、入居者とのトラブル対応、建物の維持管理など、手間がかかる点も考慮が必要です。賃貸管理会社に委託すれば負担は軽減できますが、管理費用がかかります。
しばらく維持管理する場合は、定期的な換気や清掃、庭の手入れなどが必要になります。親御さんが将来的に自宅に戻る可能性がある場合や、売却・賃貸の判断がつかない場合の選択肢ですが、維持費用が継続的に発生する点には注意が必要です。
解体は、老朽化が進んで売却や賃貸が難しい場合に検討される選択肢です。解体後の更地は売却しやすくなりますが、解体費用がかかること、更地にすると固定資産税の住宅用地の特例が適用されなくなり税額が上がる可能性があることを踏まえて判断しましょう。
実家を放置した場合に発生するリスク
実家の今後について判断を先延ばしにし、空き家のまま放置してしまうと、さまざまなリスクが発生します。主なリスクは以下のとおりです。
- 固定資産税の負担増加(特定空き家指定で最大6倍)
- 維持費の継続的な発生(年間50万円〜100万円程度)
- 近隣トラブルのリスク(害虫・不法投棄・倒壊の危険)
- 譲渡所得の特別控除の期限切れ
固定資産税については、空き家を放置して老朽化が進むと、自治体から「特定空き家」に指定される可能性があります。特定空き家に指定されると、固定資産税の住宅用地の特例が適用されなくなり、税額が最大で6倍に跳ね上がることがあります。
維持費の問題も深刻です。人が住まなくなった家は急速に傷みが進みます。水道光熱費の基本料金、火災保険料、定期的な清掃や点検の費用など、年間50万円〜100万円程度の出費が発生するとも言われています。放置すればするほど修繕費用がかさみ、最終的には売却も賃貸もできない状態になってしまうこともあります。
近隣トラブルのリスクも見過ごせません。庭の雑草が繁茂したり、害虫・害獣が発生したり、不法投棄のターゲットになったりすることがあります。老朽化による倒壊の危険性もあり、万が一隣家や通行人に被害が及んだ場合は、損害賠償を請求される可能性もあります。
また、譲渡所得の特別控除には期限があります。親御さんが住まなくなってから3年を過ぎると特例が適用できなくなるため、売却を検討している場合は早めの判断が必要です。
親が施設に入る際の実家の片付け費用と業者選びのポイント

実家の片付けにかかる費用は、自分で行うか業者に依頼するかによって大きく異なります。また、業者に依頼する場合は、信頼できる業者を見極めることが重要です。ここでは、片付け費用の相場と、業者選びの際にチェックすべきポイントをご紹介します。
自分で片付ける場合と業者に依頼する場合の費用相場
自分で片付けを行う場合の費用は、主にゴミの処分費用と交通費、梱包資材費などで構成されます。自治体の粗大ゴミ回収を利用する場合、1点あたり数百円〜数千円程度の費用がかかります。家電リサイクル法の対象となるテレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどは、リサイクル料金と収集運搬料金を合わせて1台あたり3,000円〜6,000円程度が目安です。物量が多い場合は、複数回に分けて処分することになるため、時間と手間がかかります。
一方、業者に依頼する場合の費用は、間取りや物量、作業内容によって異なります。一般的な相場は以下のとおりです。
- 1R・1K:約3万円〜8万円
- 1LDK:約7万円〜20万円
- 2LDK:約12万円〜30万円
- 3LDK:約17万円〜50万円
- 4LDK以上:約22万円〜60万円
この費用には、仕分け、搬出、処分、簡易清掃などが含まれていることが一般的です。
費用を抑えるポイントとしては、複数の業者から相見積もりを取ること、買取対応している業者を選んで買取金額を費用から差し引いてもらうこと、事前に自分でできる範囲の仕分けを済ませておくことなどが挙げられます。また、トラックの搬入経路やエレベーターの有無など、作業環境によっても費用は変動するため、見積もり時に詳細を確認しておきましょう。
費用負担については、基本的には施設に入る親御さん本人が負担するのが一般的です。ただし、親御さんの経済状況や家族間の取り決めによっては、子どもが負担したり、将来の相続分から差し引いたりすることもあります。事前に家族間で話し合っておくことが大切です。
信頼できる片付け業者を見極めるチェックポイント
片付け業者を選ぶ際は、以下のポイントをチェックすることで、信頼できる業者かどうかを見極めることができます。
- 資格・許認可の有無(遺品整理士、一般廃棄物収集運搬業の許可など)
- 見積もりの明確さ(現地確認の有無、詳細な内訳の記載)
- 口コミや評判(比較サイト、実際の利用者の声)
- 対応の丁寧さ(問い合わせ時の応対、質問への回答)
まず確認したいのが、資格や許認可の有無です。遺品整理士の資格を持つスタッフがいるか、一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているか(または許可業者と提携しているか)などを確認しましょう。無許可の業者に依頼すると、不法投棄などのトラブルに巻き込まれる可能性があります。
見積もりの明確さも重要なポイントです。電話だけで見積もりを出す業者よりも、実際に現地を確認した上で詳細な見積もりを出してくれる業者のほうが信頼できます。見積書には、作業内容、処分費用、追加料金の条件などが明記されているか確認しましょう。「一式○○円」といった曖昧な見積もりは、後から追加費用を請求されるリスクがあります。
口コミや評判も参考になります。インターネット上の口コミサイトや、遺品整理業者の比較サイトなどで、実際に利用した人の評価を確認しましょう。また、地域の消費生活センターや自治体に相談して、信頼できる業者を紹介してもらう方法もあります。
対応の丁寧さも見極めのポイントです。問い合わせ時の対応が丁寧か、こちらの質問にきちんと答えてくれるか、無理な営業をしてこないかなど、コミュニケーションの中で信頼できる業者かどうかを判断しましょう。親御さんの大切な思い出の品を扱う作業ですので、誠実で丁寧な対応をしてくれる業者を選ぶことが大切です。
まとめ|親が施設に入るときの実家の片付けは早めの計画が成功の鍵
親御さんが施設に入る際の実家の片付けは、多くのご家族にとって大きな負担となります。しかし、事前に計画を立て、家族で方針を共有し、適切な手順で進めることで、スムーズに乗り越えることができます。
片付けを成功させるためのポイントは、まず実家を今後どうするかの方針を家族で話し合うこと、親御さんの気持ちに寄り添いながら丁寧に仕分けを進めること、そして必要に応じて専門業者の力を借りることです。一人っ子や遠方在住など、ご自身だけでは対応が難しい状況であれば、無理をせず早めに専門家に相談しましょう。
また、実家を空き家のまま放置すると、固定資産税の増加や維持費の負担、近隣トラブル、資産価値の低下など、さまざまなリスクが発生します。売却を検討している場合は、特例が適用できる期限内に判断することも重要です。
親御さんの施設入居は、ご家族にとって大きな転機となる出来事です。だからこそ、実家の片付けについても早めに準備を始め、親御さんが安心して新生活をスタートできるよう、しっかりとサポートしていきましょう。信興リフォームセンターでは、実家の片付けや遺品整理に関するご相談を承っております。お困











